こんにちは。
注意:以下、文章がいつもより長くなっています。要点は以下のようになります。あらかじめ確認してもらえればと思います。
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要点
①「読解力」はそもそも測定可能か
②「読解力」の範囲
③「読解力」とは何か
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「子どもたちの読解力が落ちた」という表現をメディアを通してしばしば耳にします。
字面通り捉えれば、「子どもたちの読んで理解する力が弱くなっている」あるいは「子どもたちがものを読めなくなっている」と言う意味になるのでしょう。ただ、意味としてそうなることは確かに分かるのですが、実際に具体的な現象が生じているから「読解力が落ちた」と判断することができるのでしょうか。そこを抜きにして、「子どもたちがものを読めなくなった」なんて言われる子どもたちも大迷惑ですよね。
「読解力が落ちた」と判断する根拠は学力テストなりの試験であるかと思われます。そこでの文章読み取りのポイントが下がっていれば「読解力が落ちた」という表現にでもなるのでしょう。それならば、「読解力を上がったね」と判断できるようにするには、こぞって試験でのポイントを上げていくしかない、ということになります。「読解力を上げる」ために試験のポイントを上げる?何やらもやもやっとする話ではありませんか?では、そのもやもやの正体は何でしょうか。
2つ考えられます。1つ目は試験の妥当性です。「読解力」をそもそも試験で測ることが可能かどうか。また、それを数値化することが可能であるかどうか。あるいは、その問い自体が読解力を測るに適した問題であるかどうか。試験そのものを疑ってしまってはもともこもないじゃないかという話があるのですが、問いの中には「それ聞いてどうするの?」と疑いたくなるような問題もあります。例えば、「・・・しているということが分かるところを、本文中から抜き出せ」という問い。確かに、その内容が分かっているかどうかを測っているように見えますが、それがなぜ「5点」「3点」という数値に置き換えることができるのでしょうか。また、それを経年調査することが可能なのかどうか。同じ文章で、同じ問いで、同じ配点で調査を毎年同じ年齢の人に行って測るというのであれば、そこそこの妥当性はあるのですが、実際にそんなことができるはずがありません。毎年違う文章で測定するのですから、文章の質によって微妙な読みのちがいが生じるはずです。ポイント化してもそこは測りようがないかもしれません。
2つ目は「読解力」とはどの程度の力を指し示すかが明確でない点です。
例えば、こんな話があったとしましょう。
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よしおくんは、トイレで手を洗っていると、「いつもきれいにつかってくれてありがとうございます」と書かれたはり紙を読みました。よしおくんは、なぜかうれしくなりました。
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問1 よしおくんはなぜうれしくなったのでしょうか。
問2 よしおくんははり紙の内容を正しく読み取れているでしょうか。
問1の解答は「はり紙を読んで自分が感謝されていると思ったから」とでもしておきましょう。「ありがとう」という言葉を感謝の言葉ですので、言われて不快になる人は少ないでしょう。よしおくんはちゃんと感謝されているということをはり紙の内容を読んで分かったと言えるかもしれません。
問2です。では正しく読み取れているかといえば、解答は「いいえ」になるでしょう。このはり紙は「手洗い場をきれいにつかって下さいね」と暗に仄めかしているのです。ですから、はり紙の内容は本当の感謝を表しているわけではありません。
よしおくんの字面どおりの読みと、正しい読みとの距離は何でしょうか。「読解力が落ちた」とは、この例文のどの範囲のことを指しているのでしょうか。正しい読みができなくなったということでしょうか?あるいは字面どおりにすら読めなくなったということでしょうか。
「読解力を向上させる」という目標を打ち立てるのであれば、この読解力の範囲に応じて、何をどのように指導しなければならないかを検討する必要があるはずです。
読解力とは何か。それは書かれている言葉だけを読み取るだけではなく、書かれていないところまで読み取ることができる力を「読解力」とでもまとめることができるでしょう。では、書かれていないところは何をどのようにして読み取ることができるようになるのでしょうか。文の展開(文脈)を自分の持つ知識や事実、あるいは経験で補完することによって私たちは文を読むことができるのです。そう考えると、試験で測っているものはそもそも何か、子どもたちのどんな知識や事実、経験を前提にして測っているのかを確かめなければならないですし、そもそも現在の子どもたちがその前提をみな有するだけの環境を得ていると言えるのだろうかということを検討しなければならないはずです。大人のものさしで、子どもの読解力を客観的に測ろうとすること自体に少々の無理があるのです。
読解力ってどうやって伸ばすことができるの?その答えは案外身近なところにあるのではないかと、私は思っています。
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