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質問きました(その32)~先生の好きな本は?~

2023/10/09

質問きました。

「先生の好きな本は何ですか?」

結論

夏目漱石「硝子戸の中」、魯迅「『吶喊』自序」、「老子」(岩波文庫、蜂屋邦夫訳)など

偏りがあるのは確かですが、近代の文学が好きです。読むには難しいのです正直なところですが、時代の大きなうねりの中で、知識人たちがどのようにその時代の中で時代の制約を突破しながら、思想上の普遍を見いだし、言語化する格闘をくりひろがていたのかは、現代を生きる大きなヒントになると考えています。というより、その時代から私たちの社会の根底にあることは何ら変わっていないのかなと思うところがあります。

夏目漱石の「硝子戸の中」は、明治の文豪の人間的な姿が感じられるエッセイです。彼の日本語の厳密さもさることながら、冷静な知の中に垣間見られる彼のヒューマニスティックな部分が読み取れるある女性との会話部分が特に好きです。

魯迅の作品はだいぶ読んでいますが、心ひかれるのは彼の小説集『吶喊』の自序の中の彼が小説を書くいきさつの場面。文章を書くことに空虚な思いを抱いていた魯迅が、友人から文章を書くことを求められている場面での会話を少々引用しましょう。

≪かりにだね、鉄の部屋があるとするよ。窓はひとつもないし、こわすことも絶対にできんのだ。なかには熟睡している人間がおおぜいいる。まもなく窒息死してしまうだろう。だが昏睡状態で死へ移行するのだから、死の悲哀は感じないんだ。いま、大声を出して、まだ多少意識のある数人を起こしたとすると、この不幸な小数のものに、どうせ助かりっこない臨終の苦しみを与えることになるが、それでも気の毒と思わんかね≫
≪しかし、数人が起きたとすれば、その鉄の部屋をこわす希望が、絶対にないとは言えんじゃないか≫
そうだ。私には私なりの確信はあるが、しかし希望ということになれば、これは抹殺はできない。なぜなら、希望は将来にあるものゆえ、絶対にないという私の証拠で、ありうるというかれの説を論破することは不可能なのだ。

小春学院で、せっせと小さな声で叫んでいるのは、こんな心境でしょうか。小さな希望に何かをかけてみようという願いをずっと持っているからかもしれません。

最後に「老子」は漢文すなわち中国の古典になりますが、この本を読みながら、もう少し我々人間は俯瞰的に物事を眺められるようにならなければならないという思いを抱かされます。

ということで、もっとあるのですが、これぐらいにしておきます。

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